
生活しているとどうしてもゴミは出る。人が集まるところならなおさらだ。つまり都市部、特に盛(さか)ってる感じの都市部では、凄い量のゴミが出る。
僕らはなんやかんや、渋谷に行くことが多いのだけど、たぶん渋谷は日本でも屈指の「ゴミが出る」街だ。終電を逃して、カラオケとかで夜を明かして、始発で帰ろうとするときの「うわ、ゴミ、多いな」感ったらない。そのときいつも僕は思う。「うわ、ゴミ、多いな」と。
そんな渋谷のゴミをきれいにしたいなー、と思った…のだったかどうかは覚えていない。でもなんかそんな、ゴミの話になった。つっても、ゴミ拾いってのもなあ。いやいいんだけど。ゴミ拾いも。しかしもう少しこう、なんか…。
きれいに。
きれいに…あ、並べてみます?
というわけで始発で渋谷にやってきた。空は明るみ始めている。この時間はさすがの渋谷もそこまで騒がしくない。しかし、こんな夜と朝の間みたいな時間でも人は多い。彼らも思っていることだろう。「うわ、ゴミ、多いな」と。
さあ、ゴミを拾おう。並べるために。
センター街を歩きつつ、道中でゴミを拾う。思っていた通りゴミは多く落ちている。
ちなみになぜこんな早朝に集合したかというと、普段「始発の時間帯にはそこら中に落ちているゴミが日中には割と片付けられている」ことを知っているからである。
つまり、「誰かがゴミ掃除をしてしまう前に行かないと拾うゴミがなくなる」という理由からである。本末転倒というやつかもしれない。
装備はこんな感じ。「THE・ゴミを拾う人」って感じ。ごみばさみ・手袋・ゴミ袋。三種の神器。わざわざ図解するまでもないけど、一応。ちなみに人数は5人。よく5人も集まったもんだ、バンドだったらキーボードまでいる編成だ。
ゴミを拾いながら、代々木公園方面へ歩く。センター街を出ると人通りは少なくなってくる。
無意識に、並べるために並べやすいゴミを選定して拾っている自分たちに気づく。本末転倒というやつかもしれない。
その時、通りすがりのおじさんに「おお!偉いね!」と話しかけられた。ボランティアで清掃活動をやっている青年たちに見えたのだろう。まあだいたい間違っていないのだけど、条件だけで言えば。しかしこちらはゴミを選定して拾っている(しかも並べるために)ので、なんか少し後ろめたさみたいなものを感じつつ、曖昧にへへへと笑って返した。
だいぶ明るくなって来た頃、ゴミ収集車と遭遇。「やべえ、ゴミ取られる!」と一瞬思ったが、彼らとは領分が違う(彼らはちゃんとゴミとして出されているもの収集する。僕らはポイ捨てされているゴミを拾っている)ので、安心。
というか今日は妙に、ゴミ収集車にも親近感が湧く。ゴミ収集仲間だ。仕事としてゴミを集めている彼らも、渋谷では「うわ、ゴミ、多いな」と思っているのだろうか。
さて、代々木公園に到着。もうちゃんと朝である。ゴミ袋何個かぶんのゴミが集まった。
こいつらを一回ぶちまける。
ひとところにまとめてみた。
飲料のゴミが多い。
変なゴミも多い。「おしごとがんばってね みづき」という手紙?何かはわからんが少し胸が締め付けられる。あと大学生の卒業記念品みたいなもの。小さめの花束とか。飲み会の帰りに落としちゃったりしたんだろうな。
ちなみに画面右側の白い靴はめちゃくちゃ臭かった。びっくりした。一方、手前に少し写っている黒い靴はなぜかいい匂いだった。足の臭さってどこかで閾値を超えて、「臭い→いい匂い」の転換を迎えるのだろうか?もしくはすごいいい匂いの足を持つ人が履いていたのか?
ではこいつらを、
はい、並べていきます。ちゃんと手袋をしていてよかった。なぜなら汚いから。ゴミだからね。
「なんでこんなことやってんだろう」とは誰も言いません。それを言ったところで何にもならんことを知っているからです。大人ですからね。大人なのにこんなことやってる意味はわかんないんだけど。
タバコの吸殻はフィルターが茶色のものを手前に、白いものを奥に。
しかし一人が「あ、タバコの4列目と5列目、あいだ空きすぎちゃってるから少し詰めて」とか言いだしたときは「はぁ?」という言葉が口をついた。「イラレならすぐなのに!」という呪詛を唱えながら。デジタル世代。「タバコのマージンを詰める」という貴重な経験。現実界に整列パネルはない。
途中、カラスの大群がバサバサとやってきて、周囲の木の上にとまった彼らにカアーカアーカアーカアーと囲まれた時は、場に戦慄が走った。しかし生ゴミっぽいものは基本的に拾って来ていないので、餌になるもんがないとわかったのか、しばらく経ったら飛び去ってくれた。ほっとした。カラス怖えー。
並べおわった。記事で見るとすぐだが、だいぶ時間はかかっている。2時間くらい?始発で渋谷にやってきて2時間ゴミを並べたのだ。
ちなみに上写真からわかるように、HOPEのタバコ4連弾から始まるあたりがこだわりポイント。
まずはタバコゾーンからスタートする。渋谷の喫煙者は、フィルター部分が白いタバコを吸っている割合が多いようです。あと、箱をグチャってしてから捨てる人と、綺麗なまま捨てる人がいる。どういう差なんでしょう。もし自分がポイ捨てするとして(実際にはしませんよ)、タバコの箱をどうするかと考えると、グチャってしてから捨てると思う。綺麗なままポイ捨てする、って「ポイ捨て」という行為と「綺麗」な状態の間に乖離がある気がする。なんとなく。「綺麗なままポイ捨て」できるやつの方がサイコな感じがする。かもしれない。
吸殻を見るに、ちゃんとフィルターギリギリまで吸ってる人が多いですね。上の写真だと1本だけ長めに残して吸い終わってるのがありますが、それはギリまで吸ってる人の2本分の長さに該当。この吸い方する人はリッチだなあと思う。余裕が違うもんな。増税のたびに一本あたりの単価を計算したりしないんだろうな。
あと、これ口つけて吸ってるわけだから、多分ここからDNAとか採取できるじゃないですか(海外でゴミに付着したDNAから顔を再現する、みたいなプロジェクトがありましたね)。つまり生物レベルの個人情報がこんだけ大量に落ちてるって考えるとやばくないですか。タバコに限らずだけど。
こちらはドリンクゴミ・缶エリア。
潰されてる缶よりも綺麗なまま捨てられてる缶が圧倒的に多い(ペプシはこれでもかと潰されてますが)。多分ぽいっと捨てるというよりは、置き逃げって感じで捨てられたものたち。
お酒も多いし、外でふらふらしながら飲んでそのまま置いてったとか、そんな感じでしょうね。
こちらはドリンクゴミ・ビン・ペットボトル・パックなど。
スミノフの色違いが並んでるあたり渋谷っぽさを感じませんか?感じませんか。そうですか。
あと見所はシャボン玉の吹くやつ2本が入ってるビン的なやつですね。写真右側あたり。さすがに石鹸水ははいってなかったけど。
とまあ、そんな感じ。
うん、きれいですね。渋谷のゴミをきれいにできました。
この後、ゴミは再度ゴミ袋にまとめて(諸行無常)、然るべきところにちゃんと捨てました。一度並べたゴミを袋に詰めなおしている時、「うわ、ゴミ、多いな」と思いました。
(おわり)