
筆者は喫煙者なのですが、昨今の禁煙・分煙への流れを見るに、喫煙者であることを公言するのも憚られる気分です(もちろん禁煙・分煙が悪いことだとは思っていません、むしろ推奨すべきことであると思います)。そのぶん、心安らかにタバコを楽しめる喫煙所を発見すると、嬉しい気持ちになるのです。
以前に新代田駅周辺をふらついていた時に、ある喫煙所を見つけました。
それがこちら。一目見ただけで、他の喫煙所とは違うことがわかるかと思います。看板の文字を引用してみます。
働らける事は羨らやましい
喫煙するところが厳しくなりそうです
ジュースとタバコは相性がいい
相思 相愛 此味別世界
まあまあ そんなに急がなくても
貴重な人生
ひと息入れて下さい 一服して下さい
この場所の地主様の好意に感謝してユックリと
充分に味わってスッキリするのが
ジュース です
だいぶメッセージ性が強いのがお分かりかと思います。ジュースがどうこう言っていますが、この喫煙所の向かいにジュース屋さん?があったので、そこの店主がこの喫煙所を設置しているんじゃないかと思います。そちらのお店は閉まっていたのですが。
まあ、なんつうか、ヤバいですよね。灰皿、ひとつですからね。それに対してこのメッセージの量。「相思 相愛 此味別世界」とか、何、急に。という感じ。というか「働らく」と思われる字、これ初めて見たんだけど、略字体?中国語?あと世界の「世」も初めて見た。なんか、異世界感。「働ら」とか「羨らやま」とか、送り仮名の感じが古いので、わりと年配の方が書いたのかもしれません。
椅子もありますが、これはなんか座る勇気が出ませんでした。僕の他に2、3人の喫煙者がいましたが、誰も座っていなかった。まあ、なんというか、ね。
ご利用ありがとうございました
空き箱入れ
…(破れていて読めず)行ってらっしゃい
しかも、空き箱入れが設置されてます。「ご利用ありがとうございました」って、そちら側になんの利益もないですからね。むしろ空き箱片付けてくれるわけですから、こっちがありがとうなんですが。ホスピタリティー(と呼んでいいのか)がすごい。ていうかこれだけ劣化がすごい。
すぐ脇は井の頭線の線路なので、電車が走って行くのを眺めながら優雅に一服できます。長閑で最高。
……とまあ、最高にいかした喫煙所だったのですが、先日、通り掛かりましたら。
どーん。跡形もなくなっていました。いや、跡形はあるか。しかし灰皿も椅子も、そしてあの過剰なメッセージも、なくなっていました。
発見した当初から、大丈夫か?とは思っていたんですよね。なぜなら、1車線の細い道路の脇にあって、何かしら煙避けになるものもなかったから。しかし、僕がここを初めて見つけてから1年も経っておらず、というかここで喫煙をしたのはたった1回だったので、まあ、しょうがないとはいえ、切なさが込み上げます。
というわけで、R.I.P. 新代田のいかした喫煙所。
(おわり)