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室外機概論:室外機の見かた入門

2019.1.20
user-icon 山本 蛸

室外機。外を歩いてたらいくらでも見る機会がありましょうが、どうです?見てます?室外機。

たぶん路上観察系(?)のジャンルだとわりとポップな対象だと思うんですが、僕もこの室外機が好きで、良いのがあったら写真に撮ったりなんだりしているのですけども。

で、まあまあ大量の室外機写真がPC・スマホに眠っているので、機を見てこのサイトでもご紹介していきたいと思ってるんですけども、それに先立って今回は「室外機のどこを・どのように見るか」、的なことに関してお話できればと思います。よろしくお願いします。

室外機は関係性だ

周囲との関係によって表情は変化する

室外機を楽しむ際にどこを見るかというと、「室外機と周囲との関係性」です。関係性の美であります。まあ本体の外見・デザインを楽しむ方もいると思いますが、僕の好きな見方はこれです。関係性。基本的に室外機自体の見た目は大きく変わらないのに、周囲に置かれてるものとか、街の空気とか、そういったものとの関係性によって表情が変化する。

例えば民家に設置されているものだと、その家の人と室外機との関わり方が見えたりします。現代においてはほぼ確実に設置しなければならないものですから、それをどのように受け入れ、付き合っているか。

一方、都市部の室外機は、住宅地のそれとは趣を全く異にします。たとえば建築物一つに対する室外機の量が違う。それはビルの、あるいは都市という一つの大きな構造の一部という感じで、なんというか無機質な雰囲気を感じます。

また、その関係性は偶然性を伴う、という点も見逃せません。例えば「室外機の上で猫が寝てる」とか超アツいですが、それは猫が昼寝をやめてそこから移動した瞬間に失われます。

手弱女振りと益荒男振り

2種類の振りがあります

室外機には手弱女(たおやめ)振りと益荒男(ますらお)振りがあります。これはもともと和歌なんかに対して使う言葉ですが、

手弱女振り:女性的で優雅な歌風。
益荒男振り:男性的でおおらかな歌風。

デジタル大辞泉

こういう意味です。室外機もこの2つに大きく分けられる(と、思う)のです。それは前述の「民家の室外機と都市部の室外機の違い」にほぼそのまま重なるのですが、まあ一つずつ見ていきましょう。

手弱女振り−−生活のそばの室外機

手弱女振りの室外機を端的に言い表すならこんな感じです。「生活・有機的・ワビサビ」とか。前述の「民家と室外機」はこれです。そこに暮らす人々と、室外機との関わり。

室外機の上に植木鉢
基本形にして最強の手弱女室外機(撮影場所:新宿区)

例えば上の写真の室外機なんか基本形にして最強の手弱女室外機だと思うんですが、どうでしょうか。僕はこれを見ながら酒を飲みたいです。室外機の上に板を敷いて(これが何気にポイント高い)、植木鉢が一つ、ポツンと置いてある。強く主張してくるわけではないが、でもそれだけで風景は大きく変わります。ただ軒先に室外機があるだけでも、あるいはただ植木鉢を置いただけでも寂しかったかもしれません。

風情がすごい(撮影場所:上野)

また、上の室外機もまた、手弱女的だと言えるでしょう。画面中央の古い方の室外機と、向かって左側の比較的新しい室外機との対比、そして家自体の年季の入り方から、時間の流れに対して想いを馳せましょう。また地上に並べられた植物たちと木材、あるいは扉上の緑色も含め、全体がコンポジションでハーモニーって感じです。

益荒男振り−−都市機能の中の室外機

では次に益荒男振りです。これは「都市的・無機質」とか。これは都市部によく見られます。手弱女のしみじみした趣と違って、益荒男室外機には生活感などは薄く、もっとこうズガンとくるような。

大友克洋っぽい感じ、つって伝わる?(撮影地:銀座)

例えば上の写真、前項で見ていたものとは明らかに印象が異なるでしょう。都市部のビルディングなんかは民家と違って、1〜2台の室外機ではことを済ませられないわけですが、なのでこんなに大量の室外機が固まって設置される。これは「カッケー」って感じですね。圧倒されますね。ちなみに僕は上のようなのを見ると「登りてー」って思います。

配管とのコンポジション(撮影地:これもたしか銀座)

都市の機能部分における室外機なので、上の写真のように、配管なんかと隣り合うことも多いです。これもまたカッケーですね。これも登りたい。

益荒男室外機が無機質、無表情に感じられるのは、やはりそれが「都市機能の一部」であるからだと思います。都市を駆動させている機能の一部としての室外機なわけです。それが手弱女とは異なる、硬質的な、あるいは一種退廃的な魅力を生んでいるように思われます。

一応まとめよう

今回の概論は以上です。一応、要点をまとめておきましょう。

  • 室外機は周囲との関係性で表情を変える
  • しかもそれは偶然性による刹那的なものだったりする
  • 「手弱女振り」は生活感を感じる趣深いやつ
  • 「益荒男振り」は都市的で無機質で強いやつ

以上、この4点だけ覚えておけば大丈夫です。良い室外機はそこら中にあるので皆さんも散歩の際などに目を向けてみてください。