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クリスマスと正月の境界線を探しにいった

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12月24日はクリスマスイブで、25日はクリスマスだ。街はイルミネーションで、メリークリスマス一色だった。 しかし寝て起きて26日、街はもはや歳末、お正月、といった面持ちなのだ。あまりに変わり身が早い、と例年。 じゃあ、その境界線はどこにある?私たちは、2018年12月25日の最終電車で銀座に向かった。クリスマスと正月の境界線を探しに行った写真記録。(写真:いの、じねんじょ大先生  文:山本蛸)

有楽町駅で降りて銀座方面へ向かう。街はすでに眠っている面持ちだが、少し歩くとすぐに門松に出くわした。もはや歳末の感。「撮っとけ撮っとけ!」という感じでとりあえず撮影。盛り上がりつつも、もうクリスマスからの転換は終わっちゃったんじゃねえか?という不安もよぎる。

しかしその不安もすぐに消える。数分歩いて銀座、数寄屋橋の交差点の向こうに業者らしき人だかりと、トラックが見える。「なんかやってる?」「やってる!」青になるのを待って駆け寄る。「あーやってんな」「これはやってんなー」。やってた。銀座ソニーパーク。イベントの片付けをしているようだ。白くて大きい何かしらが運び出されている。

その白いのが、もともと何だったのかわからないが…とにかくクリスマスを片付けているようだ。やはりこの時間が、クリスマスと正月の境界線な気がしてくる。そのまま銀座四丁目方面へ歩く。

道中、ビルの脇にはクリスマスツリーが立っていた。25日も終わったのによく光っているが、その光には若干の空々しさを感じる。おそらく3時間も前なら感じなかったことである。私たちはいま境界線上にいて、この光はそれを跨がない。

向かいのビルディングの前には門松が立っていたが、壁面にはまだリースが飾り付けられている。なかなかシュールな絵面だ。店内のクリスマスツリーは、引っ込められてそこにあるのか、もともと置いてあったのかはわからないが、どっちにせよ明日の朝には片付けられているのだろう。

ほどなくして銀座四丁目交差点に到着。横断歩道を渡ると、和光本館のショーウィンドウがまさに今、正月へと転換されているところだった。

ショーウィンドウの中は青空、霞模様の雲の向こうには富士山。わかりやすく正月だ。クリスマスは数時間前まで、それは今たぶん、店内に少し見えるゴミ袋のなかだ。ショーウィンドウを眺めながら移動すると…

その隣、山野楽器本店。一同のテンションは湧き上がった。これだ!これが見たかったのだ。巨大なクリスマスツリーが倒され、運び出されようとしている。「正月」が整えられつつある和光会館の隣で、まさに今、クリスマスが役目を終えようとしている。

灯を失い、クレーンで倒されるモミの木には、おそらく数時間前には発せられていただろう「聖なる」感じ、いわばホーリーネス(holiness)とでも言おうか、言うのか?まあそのホーリーネス、はもはや見られない。ただの木である。ジャスト・ア・ツリーである。そこはかとなく哀愁。

役目を終えたツリーはトラックに乗せられ、運ばれていく。ドナドナ。

せめて屋根のあるトラックで運んでやってくれと思う。ドナドナ。

近くに時計があった。クリスマスが終わってからもう1時間半が経ったのだ。

通りを挟んで向かい、銀座三越のショーウィンドウには、もうイノシシが走っている。転換を終えつつあるようだ。


少し歩くと、クリスマスツリーが取り残されたように立っており、その近くには門松。彼らは姿形は似ていなくもないし、時期として一週間も変わらないのに、普通、こうやって並ぶことはない。

ティファニーでもクリスマスを終わらせていた。クリスマス的な物たちが中から運び出されている。

あるロボットは運び出されながら、先ほどまでいたティファニーの店舗に手を振っていた。健気だ。

クリスマスツリーは業務的に台車で運ばれていく。ツリーはおとなしく運ばれるのを待っているようだ。ちょこん、と言う感じだ。


銀座五丁目方面に来ると、この辺りはキャバクラばかりだ。花屋の前には、使用済みのクリスマスと、使用前の正月が並んでいる。「よいお年を!」とお姉さんと別れ、タクシーに乗るおじさんがいた。彼は境界線を越えて正月に向かったようだ。

やはり12月25日深夜に、(少なくとも銀座には)クリスマスと正月の境界線があった。私たちはその境界線をじっくり見ながら越えてみたわけである。